あの子はどこ?
それに気付いたとき、私は愕然となった。
あまりの衝撃に素っ頓狂な声を上げる私に、家族が訝しげな視線を送る。それは、何かあったのだろうかという心配故なのか、それともまた何かやったのだろうという呆れからくるものなのか、私には判別が付かない。
とにかく、今の私にとって重要なのはあの子を探し出すことだった。
いない。いない。どこにもいない。
決して付き合いは深くないが、私にとっては必要なあの子。一体どこに行ってしまったのだろうか。
「――――――ああ、どうしよう」
先程と同じ表情で、私は呟いた。
「関数電卓、大学に忘れてきたっぽい」
あの子=関数電卓
……………はい。関数電卓忘れました。
多分、PLUSの教室の前に物理英語やろうとしたときに置き去りにしたんだろうな。
ということは8階か。あーあ、やっちゃった。
明日はサヤと一緒に銀座まで出るので、そのついでに回収しに行こうと思います。
えーっと………。
無機物擬人化するのってヤバイ?